クィア・アクティビズム ― はじめて学ぶ <クィア・スタディーズ> のために
発行年 : 2022 年
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アメリカ合衆国での性的マイノリティの運動には 2 つの大きな動きがある 社会への同化を求める運動 (例 : 同性婚への賛成)
社会の変革を求める運動 (例 : 婚姻制度そのものの疑問視)
1 章 アメリカ独立宣言とリベラル・フェミニズム
2 章 1960 年代のアメリカと性革命
3 章 ラディカル・フェミニズムとレズビアン・フェミニズムの勃興
4 章 病気としての同性愛から抵抗へ
1870 年代から第二次世界大戦までのドイツにおける同性愛の病理化とナチスによる迫害の歴史
19 世紀末から 20 世紀初めにかけての同性愛の歴史にはドイツでの出来事が大きな影響を与えている それ以前から同性間での性愛関係はあったが、それが同性愛者というアイデンティティとは結び付けられなかった
この論文で同性愛者という概念が生まれ、同性を性的に欲求する人々は異常だと位置づけられるようになった
それに対して、「同性愛は先天的な病理であり、それを犯罪とするのは妥当でない」 とする抗議
同性愛に対する社会の理解は 1920 年代に高まりを見せつつあったが、ナチスの台頭で台無しになった 1920 年、ヒルシュフェルトはのちのナチスに襲撃を受ける 1933 年には研究所の資料が広場に集められて焚書
その後もナチスは同性愛者に対する攻撃を強めていった 人口政策上の理由 : 同性愛が広がると出生率の低下を招く 同性愛が伝染するという考え
1934 年にはゲシュタポ (秘密国家警察) が、それまでに同性愛活動に関わった男性の名簿を作成して管理し始める 強制収容所に送られた同性愛者も居た
ホロコーストの生き残りの同性愛者が自らの体験を語れるようになったのは戦後しばらく経ってから 5 章 アイデンティティとプライド
第二次世界大戦後のアメリカにおいて、同性愛者たちが社会の中でどのような状況に置かれていたか 第二次世界大戦により、同性愛者たちがコミュニティを築いた
もともと、19 世紀から 20 世紀にかけて、同性愛は病気だと考えられていたため、なかなか出会うことが難しかった
第二次世界大戦では、男だけの軍隊だったり、女の従軍により、同性愛者同士の出会いが比較的容易になった
戦後も、同性愛者たちは故郷に戻らず、同性愛者たちが多く集まる都市に留まった (例 : サンフランシスコ) 戦後の反共産主義と冷戦により、同性愛者たちに厳しい目が向けられるように
共産主義者の中には、多くの同性愛者が含まれていた
これらの団体は、差別的な人たちに認めてもらうために保守的な行動 → 1960 年代には多くの同性愛者に受け入れられなくなった
6 章 エイズの流行
7 章 エイズ・アクティビズム
8 章 クィア・スタディーズの理論とその背景
ACT UP の抗議活動を通して、人々は一緒に戦っている隣人がどのような人たちなのか気づき始める LGBT として一括りにされがちだったが、実は互いの背景をわかっていなかった 内部に目が向いていく → 白人ゲイ男性の特権性が明らかになっていった ACT UP の活動では、女性や貧困者、非白人など、白人ゲイ男性以外が対象に含まれていないことへの抗議も活発に それまで PWA を見ずに研究を進めていた科学者が、治験などで PWA に協力を呼び掛けるように 他人のことよりも自分の体調のことでいっぱいという人もいた
ACT UP でも見られたように、ひとつのアイデンティティのみによって連携することの難しさ (自身とは異なるアイデンティティへの理解の必要性) 9 章 同性婚と軍隊
ここまでの流れは、大きく 「既存の社会に同化する」 ものと 「既存の社会構造を批判し、変革しようとする」 ものの 2 つに分けられる
ひとつのアイデンティティに基づく運動であったという点では共通している
例えば、同性パートナー関係が婚姻関係に組み込まれることを良しとしない (そうすると、ジェンダー不平等を温存させてしまう)
婚姻制度に代わる、多様な関係性の構築の必要性
一方で、1990 年代以降の LGBT 運動の最重要課題として、同性婚を認めさせる運動を積極的に展開した当事者もいた 彼らは新自由主義的な価値観の積極的支持者でもあった 新自由主義的な社会は、個人の関心を公的空間ではなく私的空間に向かわせる
既存の社会構造を維持しながら、プライベートの充実に力を注ぐ
同性婚を認めさせる方向性の運動は、同性愛の主流化ともいえる
LGBT の中で同性婚の恩恵を受けるのは一部の人だけであり、同性婚のみが LGBT の特権的問題となってしまう 1990 年代以降、同性婚と並んで LGBT の運動のもうひとつの大きな焦点となったのが軍隊 国のために一市民として従軍するということは、LGBT が国へ包摂されると考える当事者もいた 一方で、包摂される国家そのものの暴力性を批判する人々も存在
米軍からの LGBT の法的排除は 20 世紀の初めから 1916 年、軍の中で同性愛行為による暴行を行った場合に処罰されるように
1921 年、軍での同性愛行為自体が犯罪に
2011 年に廃止
白人ゲイ男性も、愛国心を高め、国家に同化しようとする動き
インターセクショナルな連携の可能性が弱まっている
10 章 性別を越境する
ゲイやレズビアンなどの言葉からかなり遅れて登場していることもあり、多くの研究課題が残されている 2020 年代でも、トランスジェンダーに対する差別はなくなっていない
トランスジェンダーの問題は、社会の中で強い規範として働いている男 / 女という枠組みを問い直すこと